月1回の音楽鑑賞レポートブログ:2025年8月は「440Hzと432Hzの聴き比べと弾き比べ」

音楽鑑賞

8月終わりのレッスンでおこなった音楽鑑賞では、ある体験をしてもらいました。普段私たちが耳にする440Hzの音と、最近“癒しの周波数”と注目されている432Hzの音。たった8Hzの違いが、音楽の印象をどう変えるのか。バッハのプレリュード(平均律第1巻・第1番 ハ長調 BWV846より)を聴き比べ、響きの違いを体験しました。

432Hzの音の効果は、科学的に証明されたものではありません。感じ方は人それぞれであり、体調などにも左右されるかもしれません。


440Hzと432Hzって、そもそも何?

音の高さ(周波数)を表すのに、Hz(ヘルツ)という単位を使います。Hzとは、音が1秒間に何回振動するかを示す単位です。この数字が大きいほど音は高く聞こえます。

  • 440Hz:現在、国際的な基準とされている音の高さで、ラ(1点イ音:ピアノだとメーカー名の右寄り付近)の音です。現代のピアノは大抵、440Hz~442Hz辺りで調律されています。多くの人が普段よく耳にしている周波数です。
  • 432Hz:440Hzよりもわずかに低い周波数です。科学的に証明されているわけではありませんが、この周波数は「奇跡の周波数」や「癒やしの周波数」と呼ばれ、聴く人に心地よさやリラックス効果を与えると言われています。人によっては、「昔のなつかしさ」を感じることでしょう。あえて432Hzで演奏したり、曲を発表するアーティストもいます。

モーツァルトが生きていた時代では、ラ=432Hzだった説もあります。検証のしようがないので、実際どうだったかは不明ですが。


440Hzと432Hzを聴き比べ

今回の音楽鑑賞は、私が予め電子ピアノで演奏を録音しておきました。録音はたった1回。電子ピアノでピッチを変えて、2回聴いてもらいました。1回目は440Hzで、2回目は432Hz。何も説明せずに二つを聴いてもらい、何が違うのかクイズにしてみました。正解した生徒さんは3人でした!

「全く同じ演奏に聞こえた」という人、「何かが違うけど、何が違うのかはわからない」という人もいました。他にも「432Hzの方がゆっくり」、「ペダルの踏み方が違う」、「強弱が違う」など、様々な感想が出ました。

そのあと、タネ明かしをして再度聴き比べてみると「たしかに違う!」と驚きの声が上がりました。

皆さんも聴き比べてみてください

音楽鑑賞で聴いた440Hzと432Hzのプレリュードの演奏を貼っておきます。良かったら聴き比べてみてください。しつこいようですが、録音は1回のみです。

【440Hzのプレリュード】

【432Hzのプレリュード】※440Hzより2秒短いのは、切り取り方の問題です

どうですか?違いが分かりますか?それとも、まったく同じ音に聞こえましたか?

おまけ:442Hzでも弾いてみました

音楽鑑賞では聴かなかったのですが、442Hzで弾いたプレリュードも貼っておきます。440Hzとの違い、分かりますか?私には、440Hzよりももっとシャープに聞こえます。


電子ピアノで440Hzと432Hzを弾き比べて違いを体験

聴き比べをした後は、レッスン曲を440Hzと432Hzの音で弾き比べをしてもらいました。「いつもと全然違って新鮮」、「432Hzの方が丁寧に弾こうって気持ちになる」といった感想も聞かれました。同じ曲でもピッチが変わるだけで、聞こえ方だけでなく、弾く時の気持ちまでもが変わることを実感できたようです。

ピッチのお話

ピアノを習っている皆さんの中には、「ピッチ」という言葉を知らない人が多いと思います。アコースティックピアノは、自分で調律することはほとんどなく、調律師さんにお願いします。また、電子ピアノは調律が不要で、故障しない限り常に正確な音を出してくれます。だからこそ、普段ピッチを気にすることはないのですが、実は音楽の印象を大きく左右する重要な要素なのです。

オーケストラや吹奏楽のコンサート前に、音出しをしているのを見たことがありますか?あれはチューニングと言って、全員が同じピッチで演奏できるように音合わせをしているのです。オーケストラの場合、コンサートマスターと言う楽団のリーダー(=第1ヴァイオリンの首席奏者)が出す音に合わせます。

弦楽器は、弦の張り具合を調節することでピッチを調節します。管楽器は唇の使い方や吹き方、楽器の長さ自体をわずかに変えられるので、それらで調節できます。

ピッチが合っていないとどう聞こえるのか(音量注意!)

ピッチが合っていないとどう聞こえるのか、実際に聴いていただきます。
下の音声は、レッスン室のグランドピアノ(442Hz)と電子ピアノ(432Hz)の音を同時に出しています。ぜひ聞いてみてください(大音量なのでご注意を!)

どうでしょうか?とても気持ち悪いですよね。これで合奏したら、ものすごく不快で下手に聞こえると思います。

では、次はこちら↓を聞いてみてください。グランドピアノと電子ピアノ、どちらも442Hzです。ピッタリ合っています。
グランドピアノは8月上旬に調律しましたが、連日の暑さと湿気で若干狂ってきたかな?

さらにこちら↓も聞いてみてください。グランドピアノ(442Hz)と、電子ピアノ(440Hz)を同時に弾いています。ピッチが微妙にずれているのが分かりますか?


生徒さん方の感想

聴き比べと弾き比べを体験した生徒さんや、付き添いの親御さんたちから、さまざまな感想が寄せられました。生徒さんによって、まったく反対の感想が聞けて興味深いです。

聴き比べた感想

  • 440Hzは明るい、ハッキリしている、尖っている、新しい時代
  • 432Hzは暗い、モヤがかかった感じ、丸い、優しい、古い時代

おもしろいのは、440Hzを「短調」、432Hzを「長調」に感じた人もいれば、逆に432Hzを「明るい」と感じた人もいたことです。また、

  • 432Hzはテンポが落ちたように感じた、音が響く(残響が長い)気がした

といった感想もありました。

弾き比べた感想

  • 「いつもの音と全然違って新鮮だった」
  • 「432Hzで弾いた方が上手く聞こえる」
  • 「432Hzは、何十年も昔の世界にいるみたい」
  • 「440Hzで弾いた方がいい曲と、432Hzで弾いた方がいい曲があると思う」

今回は、「音楽を聴く・演奏するうえで、音の高さ(ピッチ)がどれほど大きな影響を与えるか」を感じられる、貴重な体験となりました。

最後に:440Hzと432Hz、どちらが好み?

聴き比べの結果、440Hzと432Hz、どちらが好きかというアンケートは、なんと半々でした!

あなたは、どちらの周波数の音楽が好きですか?電子ピアノをお持ちでピッチを変えられる方は、色々な曲を弾き比べてみてくださいね。きっと表現の幅も広がることでしょう!

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